毎年この時期になると、そのオジさんの頭の中はキノコで一杯になってしまう。夏シーズンが終わり、まち作りのメンバー達にもようやく議論をする心と時間の余裕ができるのに、肝心の長老が上の空なのだ。仕方がないので、毎年キノコがなくなる時期を呆れながら待つのだが、それもウトロの風物詩として誰一人そのことに苛立つ人はいない。
それほど好きだというキノコ採りに連れていってもらいたくて、横浜から遊びに来ていた従兄弟と一緒に連れていってもらった。僕も行ったこともないような、深い、そしてキノコがよく生えるミズナラの木がたくさん立つ素敵な原生森を半日かけて歩いた。そういえば、よく彼が「いや〜森はいいね〜」といつもしみじみ語っているのだが、“良い森”の概念が人それぞれなので彼がどのような森を愛しているのかわかりかねていた。でも、その日は彼の自然観を少し垣間見た思いがした。
狙いのマイタケはこの場所では若干時期が早かったようで、長老が思っているほどは採れなかったが、それでもいい匂いのする小ぶりのマイタケをいくつか採ることができた。一緒にいった従兄弟はどちらかというと、自称“プチひきこもり”というほどの完全インドア派なのだが、こんなにコアな森歩きにも関らず相当楽しかったようで、今日も車で走っていると「おっ、あの木にはマイタケ生えてそう!」と、すっかり“キノコ目”になっていた。
長老に言わせると収獲が少ないそうだが、充分過ぎるほど収獲し、山から下りてからのお握りが妙に美味しかった。やはりいっしょに来ていた地元のオバちゃんといろいろな話をしながらの時間は、何にも代えがたい幸せを感じた。いつも、喧喧諤諤と夜中まで議論を戦わせている長老と、会話はなくても森の中で同じ時間と空気を共有すること、そしてはじめて会った地元のオバチャンととりとめもない話ができたことは、ある意味キノコ以上の収獲だったかもしれない。
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